加来病院外来診察室
加来典誉 はい、こんにちは、精神科医の加来典誉です。お名前を伺っていいですか。吉村鏡子さん。はい。お年は?二十二歳。はい。今・・・、学生さん。そうですか。どういうことでお困りですか。お母さん。自分に臭いがあるといって聞かない。ないと思う。いつ頃ですか。三ヶ月くらい前から。よくいう自臭症という、当たり前の名前なんですけれど。臭いがあるように自分が感じると、誰でも臭いはあるんですけれど、強い臭いを発しているんじゃないかという疑いを持ってしまうと。今も臭いがあると感じている。お母さんと鏡子さんの耳の垢はですね、ネバネバしていますか、乾燥していますか。ネバネバしている。どちらかというと、腋臭の体質があることは確かですね。なんか友達か言われたんじゃないですか、臭いとか。そうですか。だからでしょうね。ショックで。女の人にとっては、臭いがあるのは、ショックですからね。臭いって言われるのは。それから続いているのかな。確かに臭いがあるんでしょうね。緊張している時に、臭いが出やすいんです。臭いって言われた時に・・・、仲がいい友達ですか。仲がいい友達。緊張している時じゃ、なかったですか。緊張していた時。腋臭があるんでしょうね。手術してみたらどうですか。そしたら納得じゃないですか。納得する。腋臭の臭いがあることを、お母さんもそんなに疑うなら、鏡子さんが、今、臭いと思う時。緊張していて、汗を一杯かいている時に、臭いを確認なさったらいいですよ。男性でも女性でも、まぁ、女性のほうが若干薄いですけれど、腋臭があるんです。だから気になるなら手術するのもいいでしょう。いくつか手術方法があって、剪除法って、いわゆる完全摘出法ですかね、びーっと線を引っ張るように切開して、中の特殊な汗を出すアポクリン腺を全部取り出してしまう方法と。一箇所穴を開けて超音波で、アポクリン腺を破壊する方法です。穴を開けてやるほうが、傷跡が少なくなりますが、値段が高くなります。値段はわたしは自信がないですけれど。お勧めは、穴をあけるほうです。ただ高いです。ちょっと考えてください。そこをまず一回、やってみたら、自分なりに納得できるんじゃないでしょうか。それでも臭いがあるとしたら、考えないといけない。まずですね、臭いがあるかどうか、測定してもらったらいいですよ。してない?してない。測定の方法があると思う。安心な所ですよ。怪しい所じゃなくて。わたしが知ってるのは・・・。病院を紹介しましょうかね。美容外科ですけれど、ちょっと待ってください・・・。あったあった。ここです。ここに行ってください。では、また来週。
加来病院外来診察室 一週間後
吉村鏡子 行って来ました。腋臭の。
加来典誉 どうでした、臭いのチェックは。
吉村鏡子 やっぱりありました。ほっとしました。
加来典誉 そうでしょうね。やっぱり気にしていますからね。率直に言ってくれるほうが嬉しいですからね。わたしのホクロ、変じゃない、っていって、確かに変って言われるほうが、正直、安心しますからね。やっぱり、穴を開けるか、切るか、どっちかって。穴を開けるのが二十万ですか。まぁ、でも一生ものですからね。
吉村鏡子 そうですね。
加来典誉 背広とかも、昔は、一生ものとか言って、十万とか、二十万で買っていましたからね。やってみたらどうですか。福岡でいいんですか。福岡でいい。わたしも腋臭があるけれど、男だから。女性は臭いが少しあるだけで、警戒されますからね。
吉村鏡子 嬉しいです。
加来典誉 よかったですね。悩みが取れて。
加来病院外来診察室 一週間後
吉村鏡子 行って来ました。
加来典誉 どうですか、腫れているでしょ。
吉村鏡子 いえ、もう治まりました。穴を開けただけだから。
加来典誉 まだ、臭いはわからない?
吉村鏡子 わからないです。
加来典誉 また、来週。必要ないですかね。二週間後にしましょうかね。
吉村鏡子 そうですね。
加来病院外来診察室 二週間後
加来典誉 臭いも完全に消えた。これで解決ですね。後は好きな時に来てください。
吉村鏡子は、その後、来なくなった。