加来病院外来診察室
加来典誉 はい、どうも、吉田朗さんですね。今度、主治医になりました、加来です。入院されるんですか。
吉田朗 入院です。
加来典誉 入院したいんですか。
吉田朗 入院したいです。
加来典誉 珍しいですね。入院したいっていうのは。自分から入院っていうのは。自費ですか、自分の費用?
吉田朗 そうです。
加来典誉 そしたら、任意入院で、いつでも自分の意思で出れますよ。
吉田朗 そうですか。
加来典誉 うーん、困っていることがあるんですか。
吉田朗 あります。
加来典誉 どんなことに困っていますか。
吉田朗 実は・・・。
加来典誉 いや、恥ずかしかったら、ぼんやりでいいですよ。外側だけでもいいですから。
吉田朗 そうですか。女性関係のことで悩んでいることがあります。
加来典誉 それは精神的なことですか、肉体的なことですか、両方ですか。
吉田朗 精神的なことです。
加来典誉 うまくいかない、女性と?
吉田朗 そうじゃないです。
加来典誉 女性が怖い?
吉田朗 そうじゃないです。
加来典誉 うーん、女性に対して、苦手意識?
吉田朗 そうじゃないです。
加来典誉 奥さん?
吉田朗 奥さんです。
加来典誉 娘さんは、いない?
吉田朗 いないです。
加来典誉 奥さん。何か問題がありましたか。
吉田朗 あのですね、相手してくれないんです。
加来典誉 奥さんが。何ででしょう。おいくつですか、奥さんは。
吉田朗 三十六です。
加来典誉 相手してくれない。浮気しているんですか。
吉田朗 浮気していないと思います。
加来典誉 なんで相手してくれないんですかね。
吉田朗 わからない。
加来典誉 いつ頃から相手してくれなくなりましたか。一、二年ぐらい。浮気している感じはない。もっとラブライフを確かめ合いたい?
吉田朗 そうです。
加来典誉 セックスはうまいほうですか。
吉田朗 いや、わからないです。
加来典誉 こういうセックスしていませんか。さぁー、セックスするぞー、ズコズコズコ、はい、さよなら。
吉田朗 してます。
加来典誉 それが原因だと思いますよ、たぶん。入院する必要はないんじゃないでしょうかね。お金の無駄だし。あのー、スローセックス実践入門っていうのがありますから。ちょっと待ってください。今、あるかもしれない。あ、ありました。『スローセックス実践入門』アダム徳永、講談社プラスアルファ新書。これ、いいです、とても。概略を言いますとね、女性というのは、性的なことに対して、肉体的なことより精神的なことを楽しむんです。だから、男性は、写真そのものを見て、オナニーして、いきますね。女性は、ストーリーが必要なんです。エロ漫画が好きなんです、女性は。エロ雑誌は、男は写真、女は漫画とかストーリーとか精神的なことを求めてきます。例えばですよ、「このスケベ女、真面目なふりして、あそこから涎が垂れてるよ」とか、好きな人から言われるとドキッとして喜びます。あの、遠巻きにやっていかないといけないんです。いきなり最初からクリトリスとかじゃなくてですね、髪の毛を触ったり、キスしたり、身体中を撫でてあげたりとか、ゾクゾクしてきますから、女の人は。遠くから、遠くから、乳首とクリトリスが一番刺激ありますから、遠いとこから、背中とか、腿とか、そういう所から攻めていって、最後に、胸を上げたり下げたり、乳首を舐めたり、クリトリスを舐めたりとかして、たまらなくなったところで、止めて、また最初からやっていく。これはひどいんですけれどね。何度もやっていると絶頂に来るんです。そして、最後に、ブスッと、指とか、ペニスを挿入すると、ドバーッといきますよ。ちょっとそれやってみてください。ちょっとエッチの練習してみた、先生に言われて。本読んでって、本を渡したらいいですよ。スローセックス実践入門を買ってみて、これやってみたいからどうって。あながち、旦那さんのことを嫌いなわけじゃないみたいだから。ちょっとやってみてください。アマゾンで買うのもいいと思います。それまで待ちきれないなら、入院してもいいけれど、意味ないですから。じゃあ、それで。また外来で。月曜日と木曜日が外来なので、どちらでも。
加来病院外来診察室 一週間後
加来典誉 どうでした。
吉田朗 爆笑してました。
加来典誉 喜んでいた。それが原因だったんですね。やってほしいって、やった。ラブライフは復活した?復活した。
吉田朗 よかったです。
加来典誉 面白かったです。基本はわたしが言っていた。遠巻きにやっていく。よかったです。これで精神科は必要ないでしょ。
吉田朗 そうですね。
加来典誉 よかった、精神病にならずに。軽度の鬱症状みたいにお見受けしていましたが。よかったです。