茜ちゃんは、わたしのお店には時々、遊びに来てました。大学二年生のロングヘアーの茜ちゃんに聞きました。
「髪がロングヘアーになってから、女の子の髪をカットするエッチがまたできるようになったんじゃない?」
「いや、今でもできない…、まだ無理…」
「今も、ブーンと、襟足にわたしのバリカンの振動?」
「そうそう…」
「したい?」
「したいな…」茜ちゃんは恥ずかしそうに笑いました。
「そのうちできるようになるんじゃない?」
「そうかも」
「こんな時に言うのもなんだけど、大学三年生から就職活動ね」
「うん」
「策はある?」
「特にない(笑)」
「わたしの必勝の作戦、聞いてみる?」
「うん」
「履歴書をロングヘアーで写真を撮影して作って、面接の時に、髪を短くして行くの…」
「どうして?」
「短い髪の方が印象がいいって、人から言われて、どうしても入りたい会社だったから、思い切ってカットしましたっていう…」
「うーん…」
「会社のために髪をカットしたっていうと、女性の面接官の受けがすごくいいと思うの。きっと茜ちゃんを推してくれるわよ」
「考えてみる…」
その後、結局、茜ちゃんは髪を切らずに、就職活動をしました。理由は、もう髪を伸ばせなくなるのが嫌だから、ということでした。茜ちゃんのお母さんとわたしはちょっとがっかりでした。茜ちゃんの就職活動の結果は、第一志望と第二志望は落ち、第三志望には受かりました。茜ちゃんは第三志望にはあまり興味がないようでした。
「残念だったね」
「うん」茜ちゃんはうつむいています。
「わたし、思うんだけどね、無理して第三志望に入らなくていいと思うよ。まだ若いし、お金のために就職するってわけじゃないから」
「どういうこと?」
「体育関係の自分がしたい仕事に近い仕事をさせてくれるアルバイト先を探して、週三日くらいパートで働くのね、そして残りの週二日を、第一志望の会社で無料奉仕するの。自分のしたい仕事の方向性をちゃんと持ってた方が、先々伸びると思うよ。どう思う?」
「第一志望の会社、入れてくれるかな?」
「それは茜ちゃん次第」
「うん」
「どうする?」
「お父さんに聞いてみる」
お父さんもわたしと同じ意見でした。お金に困っているわけでもないから、焦って無理して就職しない方がいいということでした。お父さんはわたしのことを正しいと言っていたそうです。茜ちゃんはニコニコしていました。
「どうする?」
「わたし、髪、切る…」
「そう…」
「最初から切れば良かったんじゃない?」
「そうかもしれない」茜ちゃんは笑っていました。
アルバイトを始た茜ちゃんはロングヘアーで再び履歴書を作成しました。第一志望の会社は、事情を電話で話すと、幸い、ひとまずもう一度面接をしてくれることになりました。再面接の前日、わたしのお店で、断髪式を行いました。茜ちゃんは就職活動のための黒髪を維持していました。
「どうされますか?」わたしは茜ちゃんに真剣な顔で聞きました。
「ショートカットにしてください」
この茜ちゃんの一言を聞いたわたしの下半身がキュンとしました。
「わかりました。茜ちゃんの勇気ある決断に、お祝いを申し上げます。久しぶりのショートカットね」
「そうだね」
「前髪はどうしますか?」
「眉にかからない長さに切ってください」
「横はどうしますか?」
「耳を出してください」
「もみあげはどうしますか?」
「短く切ってください」
「後ろはどうしますか?」
「刈り上げてください」
「刈り上げはオシャレに長めですか?サッパリ短めですか?」
「サッパリ短めでお願いします!」
「えらいねー」わたしは椅子に座った茜ちゃんのロングヘアーを両手でくしゃくしゃっとしました。
「バリカンで刈り上げますか?ハサミで刈り上げますか?」
「バリカンでお願いします」
「よーし、よく言った…。茜ちゃんの真剣さ、わたしは認める!」
わたしは茜ちゃんの首にタオルを巻いた後、茜ちゃんが中学入学時に使った断髪専用のピンクの刈布を再び出してきて、茜ちゃんの首に巻きました。茜ちゃんのロングヘアーを刈布の上に引っ張り出して、全部、茜ちゃんの背中に垂らし、ブラシで10分くらい丁寧にとかしました。
「大切に伸ばしてきた自慢のロングヘアーともお別れですが、いいんですね?」
「いいです」
「茜ちゃん、あなたエライわ。つらいだろうけど、がんばろうね…」わたしは思わずハサミを持たなない左手で自分の涙をそっと拭う仕草をしてシュンと鼻を鳴らして優しく茜ちゃんに微笑みました。やはり茜ちゃんはちょっと無理をしているようでした。彼女としては長い髪を失うのは残念だったのでしょう。わたしはハサミ(断髪ハサミ)を、右手で構え、茜ちゃんのロングヘアーに近づけました。
「やだー、ドキドキするぅー!」わたしは再びハサミを引っ込め、茜ちゃんに微笑みかけました。
「ほんとにいいんですね?」
「いいです」茜ちゃんの笑顔が心なしかこわばってました。
「ほんとにいいんですね?」わたしは興奮しながらもう一度聞きました。
「いいです」
「よしっ!じゃあ、いきまーす」
わたしは濡らさない背中まである茜ちゃんのストレートのロングヘアーを、ハサミでザクザクと一気に、首が全部見える長さにカットしていきました。カット中、茜ちゃんは、泣きそうになり、唇を噛みしめていました。その様子に、わたしの胸は思わずグッと高鳴りました。
四十分後、一旦、カットが終わり、ロングヘアーからショートカットになった茜ちゃんの髪をシャンプーした後、わたしが握るバリカンのモーター音が再び店内に響きました。わたしは刈り上げになった茜ちゃんの襟足に、最後の仕上げをバリカンで刈りました。前髪は思い切って短く眉上4.5センチで真っ直ぐに切り揃え、耳は出し、もみあげは斜めに短くカットしました。後ろは、一番短いところを1ミリぐらいにして、耳の上の方まで、チクチクゾリゾリと仕上げました。バリカンでカットした刈り上げは青くなりサッパリ感のある仕上がりでした。襟足の後毛と刈り上げの一部(1センチくらい)をカミソリで剃り、ドライヤーとブラシでブローして完成です。
「清楚系ショートカット美人のできあがりー!」わたしは茜ちゃんに微笑みかけました。
「ちょっと恥ずかしい…」茜ちゃんは首をすくめました。
「最初から素直になればよかったのに…」わたしは茜ちゃんの短くなったトップの髪を指でつまみ上げました。
「そうだね…」茜ちゃんは笑っています。
「面接、がんばってくださいね」
「がんばります」
面接の結果、茜ちゃんは、希望通り、週二日の無料奉仕を、第一志望の会社から許可されました。面接を担当した女性上司に聞けば、最初から髪を切っていれば、入社できていたとのこと、茜ちゃんはちょっと残念がっていました。
茜ちゃんは勤務を開始しました。ある時、こんな話をしました。
「茜ちゃん、無料奉仕ってどんなことしてるの?」
「実業団の指導」
「どんな格好でしてる?」
「というと」
「服とか」
「ナイキが好きだから、ナイキのブランドの服を着て働いてる」
「ふーん。思うんだけどね、茜ちゃんって綺麗だから目立つのよね…」
「え?」
「社員の人の補佐で入っているんでしょ?」
「うん」
「社員の人より目立つのはあんまりよくないよ」
「そうかも…。どうしたらいい?」
「わたしの考えだけど、茜ちゃんはね、わざとね、シマムラとかの地味なスポーツウェアを着たほうが目立たなくていいと思うよ」
「なるほど…」
「やってみる?」
「やってみる」
「女性の上司の人、名前なんだったっけ?」
「栗山さん?」
「そうそう。服を変えてから、栗山さんにわたしから言われたこと、話してみて、栗山さんの感想をまたわたしに教えて…」
「うん」
数日後、茜ちゃんから電話がかかってきました。茜ちゃんの女性上司の栗山さんによると、やはり、わたしの考えは正しかったということでした。茜ちゃんは地味な感じにして偉いと言われたそうです。また茜ちゃんが、髪を染めず、短いのを続けて地味にしているのもとてもいいと思うわよと、栗山さんから言われたそうです。茜ちゃんは素直に喜んでいました。茜ちゃんのお母さんも、ショートカットにした茜ちゃんが、またいい子になったと喜んでいました。
二年後、茜ちゃんは、栗山さんの会社の紹介で、別の会社の実業団の指導員として働くようになりました。しばらくショートカットを続けていました。わたしは実験のため、茜ちゃんの刈り上げをハサミだけで仕上げ、バリカンを使わないようにしました。お母さんにその後の変化を聞くと…。
「そうですねぇ、ちょっとだけ意地っ張りな感じが戻ったような感じがします…」
「そうですか。やっっぱりバリカンで刈り上げた方が、茜ちゃんは、いいんでしょうね」
「そうだと思います。でも、茜は一応、女ですから、やっぱりバリカンって必要なんですかね?なんだか可哀想で…」
「高校の時のワカメちゃんの頃もバリカンで刈り上げていましたが、茜ちゃん、どうでした?」
「とてもよかったです」
「ちょっと可哀想かもしれませんが、茜ちゃんにはバリカンが必要かもしれません…。男の子も、バリカンで丸刈りを続けると、人格が変わります。女の子もバリカンが入ると、なんていうか、こだわりが取れて、ありのままの自分と向き合うことになるんだと思います。バリカンは、性格に少々難点のある男の子や女の子には、心強い魔法の道具なのかもしれませんね」
茜ちゃんが、バリカンを使わないショートカットを二年くらい続けた後、日本で女性のロングヘアーブームが始まり、茜ちゃんはわたしに髪を伸ばしたいと言ってきました。お母さんは反対でしたが、わたしは、栗山さんはなんて言っているかと聞くと、伸ばしていいと言っていたとのことでした。わたしは大人になった茜ちゃんの自主性を尊重しようと思い、お母さんにも、伸ばしていいんじゃないかと言ってみると告げました。茜ちゃんはとても喜びました。
結局、茜ちゃんはロングヘアーになって五年ほど経ちました。茜ちゃんに聞くと、友達の女の子の髪をショートカットに散髪する想像でするエッチなことが、中学以来初めて、もう一度できるようになったとのことで、とても喜んでいました。わたしはおめでとうと言いました。茜ちゃんのお母さんはというと、やっぱり、ロングにしてから茜は性格がきつくなったとのことで、茜ちゃんはやっぱり短い髪の方がいいと言っていました。茜ちゃんの会社の先輩である粟本(あわもと)さんという女性が、茜ちゃんにしつこくショートカットにするように言っていたようです。しかし、茜ちゃんによると、会社の社長の親戚の女の子が小児がんになり、治療の過程で、頭の髪の毛を失ってしまいました。会社では、社長が、ロングヘアーの女性社員から、ヘアドネーションを募りました。結局、くじ引きで、粟本さんが当たり、ロングヘアーだった粟本さんは、ショートカットになってしまいました。茜ちゃんは、なんだか、おかしかったと話してくれました。茜ちゃんはもう短くしないの?と聞くと、短くはしたくないということでした。わたしは茜ちゃんの上司だった栗山さんと会って話してみることにしました。栗山さんは、茜ちゃんの今の会社の社員たちに聞いてみるということでした。男性社員は、特に難をつけませんでしたが、女性社員のほとんどが、茜ちゃんはショートカットだった頃の方が、良かったと思っているようでした。茜ちゃんにそのことを告げてみると、やっぱり、と苦笑いしていました。でも、短く切ることはしないということでした。せっかく、他の人の髪をカットするエッチが回復したのに、それを失いたくはなかったのかもしれません。茜ちゃんのお母さんの願いもあり、わたしと栗山さんは茜ちゃんのために一計を案じました。実は会社には、茜ちゃんの好きな加来さんという男性社員がいました。加来さんも茜ちゃんのことを好きなのですが、社長は、娘の幸子さんを、加来さんと結婚させたいと思っているようでした。わたしも、栗山さんも、結婚と恋愛は別だと知っていたので、茜ちゃんの加来さんとの結婚は無理なんじゃないかと思っていました。加来さんは幸子さんのことは嫌いじゃないようでした。不思議なことに、茜ちゃんによると、お父さんに聞くと、加来さんと結婚してもいいということでした。相思相愛で、結婚というのは、ちょっと例外的だと思い、茜ちゃんが嘘をついているのではないかと思ったこともありました。わたしと栗山さんは、茜ちゃんの失恋を予想し、加来さんは多分、幸子さんと結婚するだろうと思っていました。そこで、テレビドラマでよくやっていたように、失恋したら、ショートカットという、流れで、茜ちゃんのヘアカットができないかと二人で考えました。
その後、茜ちゃんがわたしに相談に来ました。会社の社長の幸子さんから、加来さんのことあきらめるように言われ、失恋したから、印として、髪をショートカットにしなさいと言われたということでした。(栗山さんの肝入りで、そうなったのですが、そのことは茜ちゃんには内緒にしていました。)どうするの?と聞くと。茜ちゃんは、絶対にあきらめないと言っていました。髪も絶対に切らないと言っていました。
「中学の時のこと、覚えてる?」
「何?」
「好きな男の子を、あきらめたら、その子とキスできたこと」
「うん」
「加来さんも同じなんじゃないかな。たとえ加来さんが幸子さんと結婚しても、会社で加来さんとは茜ちゃんといつも一緒でしょ。中学の時みたいに、いろんなことができるかもよ。恋愛と結婚は別だから、結婚はあきらめてみるのもいいんじゃない?」
「そうかな…。わたしはあきらめたくない。お父さんもいいって言ってるし」
「本当なの?」
「本当だよ。わたし嘘はつかないよ。髪も切りたくない」
「髪を切ったらいいことあるかもよ…」
「いやだ…」
ロングヘアーになってから、確かに茜ちゃんは我を張るようになったように思いました。
「でも社長さんの考えもあるでしょ」
「結婚は個人間のものだから、会社は関係ない…」
「そうは言っても、現実問題、加来さんとの結婚は難しいと思うよ。加来さん、茜ちゃんを選んだら、会社やめないといけないんじゃない?」
「確かにそうかもしれない…」
「加来さんのために、身を引くっていうのも、大人の女性としては大事なことと思うわよ」
「ちょっと悔しいな…。わたし、幸子さんってあんまり好きじゃないの。失恋だからショートカットにしろって、わたしにしつこく言ってくるし…。そんなの個人の自由でしょ…」
「幸子さんがどんなつもりで言っているかは知らないけど、会社の女の人たちや、茜ちゃんのお母さんは、みんな茜ちゃんは髪が短い方がいいって言ってるね…」
「それはわかるけど、わたしの髪はわたしの自由でしょ…」
ヘアカットについては、それからもわたしと茜ちゃんは平行線でしたが、加来さんのためを思って、加来さんをあきらめないといけないというのは、茜ちゃんとしては納得し始めたようでした。
数週間後、茜ちゃんの前の会社の上司の栗山さんから連絡がありました。どうやら、近々、幸子さんが茜ちゃんのロングヘアーを会社で黒染めし、翌日、わたしのお店でヘアカットさせる計画を会社の女子社員たちが立てているようでした。うまく行きますかね?とわたしは栗山さんに聞きました。女子社員たちは、会社の社長さんや社労士さんにも相談しており、計画はすでに具体的になっているようでした。
「これまでずいぶん長かったけれど、茜ちゃんもまたついにロングヘアーをやめなくてはならなくなったみたいですね」わたしが栗山さんに言いました。
「茜ちゃんのお母さんとも話したのですが、茜ちゃんは短い髪を今後、ずっと続けた方がいいということを言っていました」
「茜ちゃん、今後、一生、ショートカットですか?」
「そうなるかもしれません」
「ちょっと可哀想ですね…」
「何もなければ、わたしもこんなことは言いませんが、最近、茜ちゃんに会ってみて、やっぱり前と変わったなと思いました。少し可哀想だけど、これも茜ちゃんのためですから…」
わたしの発案で、茜ちゃんのヘアカットには、茜ちゃんのお母さんも参加することになりました。その後、数日して、茜ちゃんがわたしに相談に来ました。茜ちゃんはついに加来さんをあきらめることにしたようでした。それから、幸子さんに髪を黒く染めてもらわなければならなくなったこと、翌日、わたしの店にカットに来ることになったことを改めてわたしに話してくれました。わたしはちょっと可哀想と思いながらも、久しぶりのヘアカットにワクワクしていました。今回は、わたしではなく、茜ちゃんのお母さんが、茜ちゃんのロングヘアーをバッサリと最初にカットする計画でした。茜ちゃんはそのことを知りません。加来さんと自分のロングヘアーをあきらめることになった茜ちゃんは、寂しそうな表情を隠せない様子でした。
当日、茜ちゃんが、会社の女子社員たちに付き添われて、わたしのお店にやってきました。お店には茜ちゃんのお母さんが先に来て待ってました。茜ちゃんは驚いていました。わたしは、会社の人から話を聞き、心配して、お母さんが来てくれたと説明しました。背中の真ん中過ぎまでの黒髪ストレートのロングヘアーの茜ちゃんは、わたしの散髪椅子に座りました。わたしは、タオルを茜ちゃんの首に巻き、断髪式用のピンクの刈布を茜ちゃんにつけました。
「今日はどうされますか?」わたしが聞きました。
「ショートカットにしてください」茜ちゃんは不機嫌にブスッとしていました。
「理由を聞いていいですか?」
「失恋したので」
「そうですか。ショートカット、素敵になると思いますよ」
「…」
「前髪はどうしますか?」
「眉にかからない長さにしてください」
「横はどうしますか?」
「耳を出してください」
「後ろはどうしますか?」
「刈り上げてください」
「刈り上げはバリカンでいいですね?」
「はい…」
「お母さん、茜ちゃんのロングヘアーからの最初のカットは、お母さんにお願いします」
「わかりました」お母さんが答えます。
わたしはハサミの使い方をお母さんに教えました。わたしは茜ちゃんのロングヘアーを全部、刈布の背中側に垂らして丁寧にブラシをかけました。お母さんには襟足ギリギリの長さで、切ってくださいとお願いしました。
「茜、じゃあ、切るけどいい?」お母さんは、右手で持った断髪ハサミの刃を開き、シャキシャキと空中で動かしました。
「うん…」茜ちゃんは寂しそうでした。
「茜さん、カット前の今のご心境は?」幸子さんが茜ちゃんに聞きました。
「悔しいです…」
「でも、えらいと思いますよ。自分でやりたいことをあきらめて、ケジメとして髪を切るって」わたしが言いました。
「そうですねー。自分の負けを認めるって、そんなに簡単にできるわけではないですよね」幸子さんが言います。
「負けを認めて、ありのままの自分と向き合うって、とても大事なことですよ」わたしが言いました。
お母さんは、ザクザクと乾いた茜ちゃんのロングヘアーを、首筋で一気にカットしていきました。思わず十数名いた女子社員たちから拍手が起きました。
茜ちゃんはニッコリしました。
「あらっ、ニッコリしちゃて。なんか楽になった感じがするんじゃない?」
「そうかもしれない…」
「ロングヘアーで、突っ張ってたのよね。茜ちゃん、負けたくないって、がんばってたから。頭が軽くなって、心も軽くなったかナ?」
「うん…」
「茜ちゃんは、がんばらなくていいのっ!茜ちゃんは負けていいのっ!いじになって守ってきたものをあきらめたら、ホラ!楽になった…」わたしが言いました。
「お母さん、いい思い出になりましたね。揃え髪とかしかしたことなかったでしょ?」わたしが続けます。
「そうですね、茜が小さい頃ですけどね」
「どうでしたか、バッサリの感想は?」
「気持ち良くカットさせてもらいました。結構、立派なロングヘアーで、戸惑いもありましたけど、ハサミを動かす手は、母親としての喜びに、ワクワクしていましたね」
「お母さんの優しさですよね。女の子の人生の節目節目に、断髪式というのもなんだか切ないけど、いいものですね。ポカポカしてきました。」
「じゃあ、お母さんからバトンタッチして、わたしがカットするわね」
わたしは、茜ちゃんの前髪をカットしていきます。長さはいつものようにオンザマユ眉上4.5センチ(笑)。耳周りの髪もカット。もみあげは短めで斜めにカット。後ろの髪をブロッキングして、襟足は刈り上げ…(笑)。ハサミで豪快に刈り上げたあと、スライブのバリカンで仕上げです。ウィ〜ン、ジョリジョリ、ジジジジィ…♡わたしは無意識に鼻の下を伸ばし、ニンマリ楽しみながらバリカンで茜ちゃんの襟足の毛を刈り上げていきます…。茜ちゃんの表情がこわばってきました。そして、涙…。その瞬間、わたしの下半身は思わず少女のように小躍りし、目はパチパチパチパチ…。茜ちゃんはわたしが性的に達してしまったことに気付いたのか、悔しそうに大泣きしました…。わたしは構わずバリカンします。茜ちゃんは涙と鼻水をすすります(笑)。なんとも言えない優越感と満足…。わたし自身はショートカットは愚か、肩上の髪にもしたことがないんですよね…。
茜ちゃんの長かったロングヘアーはものの30分で、あっという間にショートカット(快感笑)。
シャンプーをして、ドライヤーでブローします。その後、剃刀に代わって女の子用に新しく配備された電動式のフェイスシェーバーで、襟足のラインをを剃り上げます…。ジジジジジィ、ジョリジョリジョリ♡、ゾリゾリ♡、ジジジジィ…。襟足の下の方を1センチ剃りました(剃り過ぎ注意報!)。ピンクの刈布をとって、終わりと見せかけ、茜ちゃんはホッとした表情。しかし、いそいそとわたしはまた茜ちゃんの襟足にバリカン…。わたしは5分くらい丁寧にバリカン…、ウィ〜ン…。茜ちゃんはちょっと辛そうに下を向きます…。うふふ(快感)。
カット終了です。茜ちゃんの首に巻いたタオルを取りました。拍手が起こりました。幸子さんがいいことをしたいと提案してきました。幸子さんはわたしにそっと耳打ちします。わたしは頷きました。
幸子さんは、おもむろに茜ちゃんの後ろに立つと、右手で茜ちゃんの頭を前にぐいっと倒しました(茜ちゃんは少々ムッとした表情…)。そして、幸子さんは茜ちゃんの襟足の刈り上げにディープキッス…。茜ちゃんは思わずニコニコします。すると幸子さん、茜ちゃんの右のこめかみにデコピン(ペシッ!)…。「イテッ…」と茜ちゃん。茜ちゃんと幸子さんは大笑い。二人ともかわいいですね。すると、後ろから声が…。「わたしも〜」見ればヘアドネーションでショートカットになり、今はセミロングになった粟本さんでした。早速、茜ちゃんの襟足の刈り上げにチュチュチュっと三回キッス。よく見ると、茜ちゃんの襟足に粟本さんの唾液が(笑)…。もしかしてわざと??茜ちゃんは顔を赤らめてちょっと恥ずかしそうです。今度は、わたしが茜ちゃんのこめかみにデコピン(ペシッ!)…。「イテッ…」と茜ちゃん。そして、茜ちゃんのお母さんがやってきて、椅子に座った茜ちゃんを後ろから抱きしめ、茜ちゃんの刈り上げに頬擦りします。「茜は、やっぱりショートカットが一番ね」茜ちゃんのお母さんは嬉しそうに微笑みます。わたしは無意識に自分のロングヘアーを首筋で両手で束ね静かに撫でていましたっけ。わたしのロングヘアーがサラーン…、うふふ。その時の茜ちゃんの悔しそうな顔…(快感笑)。
「茜ちゃん、話があるんだけどいい?」茜ちゃんの前の会社の上司の栗山さんです。
「いいですよ」
「あのさ、今日のヘアスタイル、これからずっと続けてみない?」
「え…」
「続けるとすごくいいことがあるよ」
「どんなですか…」
「続けるって約束してくれるなら言ってあげる」
「ちょっと言えないです」
「茜ちゃんはね、髪を伸ばすと、どうもいけないみたい」
「わかります…」茜ちゃんは寂しそうです。
「お母さんや川本さんに聞くと、バリカンで刈り上げたほうがいいみたい…。わかる?」
「そうかもしれません…」茜ちゃんはしょんぼりしています。
「茜ちゃんはショートカット・ウィズ・バリカンがいいって川本さんが言ってた。わたしもそう思うよ。どう?茜ちゃんは、毎月、ここでカットすると、茜ちゃんは人生がうまくいくと思うよ。やっぱりイヤ?」
「イヤだけど、仕方ないかもしれないです…」
「刈り上げショートカット続ける?」
「続けます…」茜ちゃんは思い詰めたような表情でした。
「ありがとう。だったらご報告があります。社長がね。つまり幸子さんのお父様だけど。茜ちゃんがショートカットになったら、茜ちゃんは加来さんと結婚していいって言ってたのよ」
「え!?」
「幸子さんもわたしも今日来てる女性社員たちはみんな知ってたの…」
「そうなんだ…」茜ちゃんはニコニコしています。
「茜ちゃん、とっても偉かったと思うわよ」粟本さんも言います。
「でも、社長の提案に加えて、わたしと会社の女子社員たちの希望は、茜ちゃんが刈り上げヘアーを一生続けるってこと…。だったの…。バリカンの刈り上げなら、ショートカットじゃなくてもショートボブでもいいのよ」
茜ちゃんはニコニコしています。
「いいですよ。髪の毛より結婚の方が大事だから…」
お母さんがバッグを持ってやって来ました。茜ちゃんは不思議そうな顔をしていました。
「茜、いい?」
「なに?」
「茜がロングヘアーの時に使ってた、ゴムとか、シュシュとか、ヘアバンドとか、バレッタとか、もういらないでしょ?」
「そうだね…」茜ちゃんはちょっと寂しそうです。
「茜のロングヘアーのヘアアクセサリー、ここに来ている女の人たちに全部プレゼントしない?いや?」
「いいよ…」茜ちゃんはニコニコしています。
「坊主にカンザシ。ショートカットにシュシュね…」お母さんが笑って言います。
茜ちゃんはぷーっとほっぺたを膨らませました。
「そうだけど、なんだか悔しい…」
「うふふ…。茜はもうロングヘアーには一生できないけど、どう思ってる?」
「ちょっとつらい…。でも加来さんと結婚できるならいい…」茜ちゃんは襟足の刈り上げを手で撫でながら顔を赤らめます。
というのが茜ちゃんの結婚に至るまでの大体のあらましです。茜ちゃんは、刈り上げを続ける予定で、夏はショートカット、冬はショートボブがいいんじゃないかと思っています。いずれにせよ、わたしが茜ちゃんのヘアカットを今後も担当するので、幸せなのですが。長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。
追記:
先日、茜ちゃんの切ったロングヘアーを、茜ちゃんの一番のお気に入りのシュシュ(幸子さんがもらったもの)で巻いて、額装して、茜ちゃんにプレゼントしました。加来さんとの新居に飾られているようです(笑)。