わたしは28になる女です。OLをやってます。ネットをやっていて、断髪フェチというジャンルがあることを知って、同じ感性を持った人がたくさんいることを知り、自分のフェチを表に出すことがすこしずつできるようになりました。わたしは中学生になるまで断髪フェチを意識したことがほとんどありませんでした。きっかけは引越し先の中学の髪型校則でした。そのときの話をしますね。
わたしはもともと福岡の久留米市ということろの中学に通っていました。女優の田中麗奈の出身地です。そして、そこから親の仕事の関係で中学1年の途中に八女市というお茶が有名な場所に引っ越したんです。久留米の学校では、男子は全員丸刈りでしたが、女子は長い髪でも結べばOKでした。わたしは小さいころからロング派で、肩より短くしたことが一度もなかったんです。自分で言うのもなんだけれど、髪がきれいなストレートで、背中の真ん中までの自慢のロングヘアーだったんです。お姉ちゃんも久留米の学校に行っていて、中学3年間ずっとロングだったので、わたしもずっとロングを続けると思ってました。だから小学校の間でも髪型校則とかはまったく意識してませんでした。強いて意識したとすれば男子の丸刈り校則くらいでした。今考えると、男子には悪かったなと思いますが、ひとごとなので、小学校を卒業する前に続々と男子が丸刈り頭になっていく中で、まだ丸刈りにしていない男子がいると、「あらっ、きみもそろそろバリカンじゃない?」とか言ってからかってました。中学校に入ってからも散髪したての丸刈りの男子たちの頭を触りまくって喜んでました。
八女に引っ越して、最初の登校日は、いつも通り長い髪をひとつ結びにして、何も知らないで学校に行ったんです。学校に行ってみると、男子は全員丸刈り、これは驚かなかったのですが、女子も肩より長い髪の子がひとりもいないのに気づきました。さすがに不安になりましたね。クラスのみんなの前で、あいさつするじゃないですか、わたしだけロングで、見ている女子はみんなちょっとださめのオカッパとかショートなんですよ。微妙な気持ちでした。なんかクラスの人から冷たい目で見られているみたいで、特に女子から。昼休みに急いでトイレに入って受け取った生徒手帳を見ると、女子の髪型はオカッパかショートカット、制服の襟よりも長い髪は認めないとはっきり書いてありました。覚悟はしていたものの実際に見るとさすがにショックでした。放課後にお母さんが迎えに来て、一緒に担任の女の先生の待つ応接室に行きました。手続きの書類とか、学校生活の注意とか、普通に話は進んで、最後に髪の話になりました。女子の髪型はオカッパかショートカットということを改めて聞かされました。ロング好きのわたしを知っているお母さんなら何か言ってくれるかと思ったら、いつもと同じような表情で普通にうなずいていました。しかも、学校指定の床屋さんがあるということを聞かされ、髪形の規則に間違いがないように最初は必ずそこの床屋さんに行くように言われました。中学の名前を言えば規則に合った髪型にしてもらえるということでした。渡されたプリントには校区内にある5個くらいの床屋さんの名前が書いてありました。お店に髪を切りにいくの自体が7年ぶりで、しかもわたしは床屋さんに行ったことがなかったので不安でしょうがなかったです。担任の先生もわたしの不安そうな様子を察したのか、「前の学校はロングでも良かったんですね。ロングの時と違って、首筋がスッキリ出るから、風が涼しいし、同じように首を出したポニーテールの時と違って、髪の毛の量もグッと減っているから、頭が軽くてラクチンですよ」とニコニコ顔で言われました。担任の女の先生は40くらいで、わたしと同じくらいのロングヘアーの先生でした。わたしがなんとなく悔しくなって、「先生は、髪が一番短い時はどれくらいでした?」と聞くと、「そうですね、わたしのときは、髪型の校則がなかったので、肩につくか、それより長い髪しか、経験がないです。がっかりさせてごめんなさいネ。先生はオバさんになってしまって、もう短いのは似合いませんから。今の学生さんは、若い時にこういう機会があるので、思い切って、オカッパやショートカットとか、短い髪型にチャンレンジできて、かえってうらましいわ。夏の大会前になると部活動で刈り上げのショートカットにする女子生徒もいますよ。聞けば、床屋さんの電気バリカンで刈り上げてるっていう子もいて、気合が入っていて、よいなっと思います。刈り上げなら汗っかきでも安心ですね。女の床屋さんにヘアカットしてもらってるようですよ。電気バリカンで刈ると、青々した刈り上げに仕上がっていて、思わず見とれてしまいます。オバさんのわたしにはとても真似できませんから」わたしが反抗的になって「なんで髪を短く切らないといけないんですか?」と聞くと、「まずは長い髪にこだわっている心を変えましょう。それは甘えです。大人になる準備段階だから、少しずつ、我慢を覚えないといけません。決められたことをきちんと守ることから何事も始まります。髪は女の命と言うけれど、オカッパになった時、何かが見えると思いますよ。男の子にも言うんですけれどね、電気バリカンがバリバリ頭に入っていくことで何かが見えてくるって。大事にしているものとの別れが人を大きくすることもありますよ」と先生は右手でチョキマークを作って、わたしの前でチョキチョキ動かしました。お母さんはクスクス笑っていました。わたしは呆然としてしまい、これからどうしようかと思いました。
家に帰る途中、お母さんに髪を切りたくないと言いましたが、お母さんは「あら、お母さんは楽しみね。短くなるとどうなるかって。いい経験だって担任の先生も言ってたじゃない。本当はお母さんが散髪してあげたかったけど、最初は床屋さんなのね。男の子もなのかしら。長い髪ともしばらくはサヨナラね。なんかサクラサクって感じでいいな」と言いました。わたしは唖然としてました。家に帰っても切りたくないと言ってだだをこねると、「オカッパかショートカットなのよね、どのくらい切らないといけないのかしらね、生徒手帳に書いてあった?」と言われたので、だまってお母さんに生徒手帳を渡しました。生徒手帳のオカッパの所には「前髪は眉より指一本ぶんよりも上で、横一直線に切り揃える。横の髪は、あごのラインで、一直線に切り揃える。後髪は、横の髪と同じ長さで、一直線に切り揃える。」というようなことが書いてありました。お母さんは鏡の前でわたしと一緒になり、手で長さを確かめました。「思い切ってショートカットにしたら?」とお母さん、わたしは絶対にいやだと反対しました。「明日かあさってには切りに行かなきゃね。電気バリカンで散髪してもらってる女の子もいるみたいじゃない、さっぱり短く散髪してもらってきなさい」とさらっと言われました。あんまりあっけなかったのでわたしもすぐに言い返せませんでした。その日は金曜日だったのですが、土曜日には未練があってどうしても行けず、結局、日曜日の夕方に行くことになりました。プリントにあった床屋さんには住所と店長さんの名前が書いてあったのですが、知らないおじさんに切られるのは嫌だったので、ひとつだけあった女の人が店長さんの床屋さんに行くことにしました。お母さんは「ひとりで大丈夫?」と言ってくれましたが、ついてきてもらうのは恥ずかしかったので、受け取った3千円を財布に入れて、家を出ました。その床屋さんは市役所の近くということだったので、すぐに見つかりました。赤と青のサインポールが回っていて、わりとこぎれいなお店でしたが、お店に入る前に、まわりをうろうろしてしまって、すぐには入れませんでした。
勇気を出してお店のドアを開けて中に入りました。出迎えたのは40くらいの女の理容師さんでした。あごのところに南野陽子みたいなほくろがあったのを覚えています。お客さんはわたし一人でした。年齢的には当時のお母さんと同じぐらいでしたね。優しそうな人だったのでちょっと安心しましたが、「カット?」と聞かれると、緊張で思わず足がすくんでしまいました。わたしがだまってうなずくと、散髪椅子に案内されました。ピンクの刈布をかけられ、「中学生のお客さん?今日はどうしますか?短くするの?」と聞かれました。わたしは言いたくなかったけれど、事情を説明し、通うことになる中学校の名前を言いました。理容師さんは「やっぱり、そうですか。せっかく長い髪でもったいないけどしょうがないわね。今日、お店の棚を整理していたら、このピンクの刈布が出てきたのよ。こういう時って結構、女の子の決意の断髪式があるものなのよね。大事に伸ばしたロングヘアーだろうけど、心を鬼にして短くカットさせてもらうわね」と言いました。「ご希望は、オカッパさん?ショートカットさん?」と聞かれたので、オカッパならぎりぎり結んだりもできるかなと思い、「オカッパで」と答えました。「オカッパさんね、わかりました」理容師さんが、なぜか「オカッパ」と「ショートカット」に「さん」づけをしていたのを覚えています。理容師さんは「オカッパさんもきっと似合うと思いますよ。スッキリと短くなった髪も、女の命って言えるように可愛くカットしてあげるわね」と言いました。理容師さんは背中の真ん中まであるわたしの髪をすごく丁寧にブラシとクシで梳かしました。数分後にはゴミになってしまうのに、なんでこんなに念入りにされるのかって思いました。その後、髪を霧吹きでまんべんなく湿らせました。
「それじゃあ、サッパリ短くしちゃいましょうね。がんばってくださいね」と、ハサミを手に持った理容師さんが笑顔で聞いてきました。わたしにはその笑顔がかえってつらかったけど、うなずくしかありませんでした。理容師さんは、まず、あらくわたしの髪をザクザク切っていきました。背中の真ん中まであった髪が、あっという間に肩につかない長さになりました。大事に伸ばしてきた髪だったので、正直、こんなに簡単に短くカットしてしまう理容師さんが少し憎かったです。でも今考えるとあんなふうに一気に切ってくれたほうが、ゆっくりじっくり切られるより、たしかに気が楽だったと思います。理容師さんもわたしと同じようなロングヘアーの小中学生の女の子のお客さんを何人も短くカットしてきたからわかってたんでしょうね。それから、前髪です。目を閉じていましたが、オデコのところでジョキジョキと前髪が一直線に切られていくのが伝わってきました。ハサミの音が止まったので、目を開けると、前髪が半分だけ眉の上できっちり切り揃えられていました。理容師さんは、残った前髪はそのままににして、横の髪を切り始めました。そしたらビックリしました。切った毛先がほっぺの真ん中あたりに当たるんです。なんでこんな短くされちゃったんだろうってパニック状態でした。たぶん顔も引きつっていたんじゃないかな?そしたら理容師さんが「大丈夫?中学生の最初のお客さんはちょっと伸びても風紀検査にひっかからないようにいつも生徒手帳より少しだけ短めに切らないといけないの。ごめんね」と言いました。わたしは大きなお世話と言いたくなりましたが、かわりに「大丈夫です」と言っていました。それからどんどん切られていって、前髪も全部、眉の上になり、反対の横の髪も短くなり、最後に後ろの髪を切って、オカッパの出来上がりです。もう終わりかと思ったら、後ろのほうでジョリジョリ音がするんです。うなじをカミソリで剃られてたみたいです。とにかく信じられないって感じでした。
カットが終わり、ドライヤーで短くなった髪を乾かされてブラシを入れられてから、改めて鏡を見ると、ロングヘアーだった自分の代わりに、ひとりの田舎の女子中学生がいました。この前、八女の学校のクラスで見た女子たちと今は自分も同じです。そしたら理容師さんが、「ロングヘアーからのドラマチックな断髪式だったけど、意外とケロッとしてるわね。安心しました。心を鬼にして短く散髪するって言ってたのもウソみたい。もう髪の毛は結べなくなっちゃったけど、素敵に短くなったオカッパ頭で学生生活をエンジョイしてください。頭も軽やかに、心も軽やかに、新生活、がんばってくださいね」とニコニコして言いました。わたしは素直にはそう思うことができませんでした。「切った毛、断髪式の記念に持って帰る?」と聞かれたんですけど、なんか切った髪の毛持って帰るのって結構つらいじゃないですか。だから断りました。「夏場はショートカットも涼しげでおすすめですよ。短い髪型を怖がらないでね」と理容師さんが笑顔で送ってくれました。
理容師さんにお金を払って放心状態で家に帰りました。家に帰ってしばらくは恐くて頭を触わる事も鏡を見る事も出来ませんでした。しばらくして勇気を出して鏡見た時はやっぱりショックだったですね。首くっきり見えるし、耳たぶもちょっと出てるし・・・。それにうなじ剃られてるし。正直いって信じられなかったです。でも、現実でした。それから髪の毛をさわってみて改めて夢じゃなかったんだって思いました。理容師さんの言っていた通り、とても結べるような状況じゃなかったです。お母さんは「あらっ、かわいくなったわね」と言っていましたが、無責任に聞こえてしょうがなかったです。そのうちお姉ちゃんが帰ってきてわたしの頭を見てクスクス笑って、「別れが人を大きくするのよ。髪の毛ひとつとってもドラマがあるわね。お姉ちゃんだけロングヘアーでごめんね」と言っていました。お父さんも私の頭を見て笑ってるし。翌日、中学校に行くと、わたしのダサいオカッパ頭を見たクラスの女子たちの勝ち誇ったような視線がつらかったです。1、2ヶ月してクラスにもだいぶ慣れて、友達もできました。それから一度だけ、髪のお洒落をしたくて久留米の美容室に行ったりもしたのですが、女子の先輩に生意気だと言われ、結局、八女に来て最初に行った南野陽子似の女性理容師さんの床屋にずっと通いました。理容師さんのおばさんとも仲良くなりました。部活で刈り上げにする女の子はこの理容師さんに散髪してもらっているそうでした。電気バリカンで刈った青い刈り上げには理容師のおばさんも思わずウットリくるそうでした。わたしは、それから、ずっとオカッパでしたが、一度だけショートカットにしたことがあります。そのときの話はまた別の機会にしますね。