理容師の谷山広子です。お子さんの長く伸びた髪が気になりませんか?本当はお子さんの髪をスッキリ短くさせたいけれど床屋さんにしょっちゅう行かせるのはもったいないので、男の子も女の子もついつい髪を伸ばさせっぱなしなんてことはないですか?子供は汗っかきだからできれば髪はいつでもサッパリ短く清潔にしてあげたいですよね。もしそうでしたら、お家でお母さんがいつでも好きな時にお子さんの髪を思い通りにスッキリと散髪できたらいいですよね。
前回、ヘアカット特集のあった「主婦の知恵」8月号('87)では、お子さんの伸びたロングヘアー、セミロング、坊ちゃん刈りを少し切るだけで簡単にそろえる方法をご紹介しました。今回は「ロングや坊ちゃん刈りからそろそろ卒業。子供のためのちょっと短めヘアカット」ということで、ロングヘアーや坊ちゃん刈りといったお子さんの現在の長めのヘアスタイルを思い切ってサッパリ短いヘアスタイルに散髪するための手順をご説明します。また、前回の内容をご存じない方のために散髪道具の揃え方と準備から散髪後の上手な後片付けと散髪道具を長く使うための手入れの方法までをもう一度ご説明します。せっかく、お家でヘアカットするのですから、コツをつかんで楽しくお子さんの散髪をしましょう!紙面の都合上、今回、ご紹介できるお子さんのヘアスタイルは、男の子の丸刈り、女の子のオカッパ、女の子のショートカットの三種類だけということにさせていただきました。他にも人気のあるヘアスタイルとして乙女刈り(襟足を刈り上げたオカッパ)や、男の子のスポーツ刈りなどもありますが、これらは次回の特集までお待ちください。
そろそろ入学シーズンですね。中学校で圧倒的に多いのが男の子の丸刈り、女の子のオカッパ、ショートカットです。ご自宅でお子さんを学校で指定された髪型に散髪してあげたいというご要望が多いようです。特に息子さんを丸刈りにしてあげたいというお母さんがとても多いです。女の子のオカッパやショートカットにも要領が必要です。本誌できれいな丸刈りやオカッパ、ショートカットのコツを伝授できたらと考えています。ご自宅のリラックスした雰囲気で、息子さんや娘さんの気持ちのわかるお母さんが優しく散髪してあげるのはどうでしょうか。お母さんが愛情込めてカットしてスッキリさっぱり短くなった新しい自分のヘアスタイルをお子さんはきっと気に入ってくれるでしょう。このまえがきでそれぞれのヘアスタイルについて基本的なことを書いています。後のページにくわしいヘアスタイルの作り方がありますので、まえがきをお読みになってヘアスタイルが決まったら、そちらをご覧ください。
まずは男の子の丸刈りを簡単にご紹介します。中学生の男の子といえば、やっぱり丸刈りですね。思春期の男の子にぴったりのサッパリ清潔な髪型です。バリカンがあればお母さんが自宅で簡単に散髪を楽しめます。丸刈りにしたことがなくてしぶしぶという男の子も中学生になっていい機会ですから、お母さんのバリカンでサッパリ丸刈りにしてもらいましょう。慣れると気持ちよくて、いい気分転換になりますよ!バリカンには手動バリカンと電気バリカンがありますが、手の力がいらない電気バリカンが女性には向いています。電気バリカンなら力を入れなくてもスイスイ刈れるので、丸刈り予定の息子さんをお持ちのお母さんにはおすすめです。思春期の男の子の丸刈りにぴったりの業務用の電気バリカンは依然として高価ですので、家電製品のスキカルでもいいのですが、同じようにご自宅で息子さんを丸刈りにしたいと考えている近所のお母さんたちがご近所に多いのでしたらみなさんでわたしたち理容師が使う本格的なバリカンを共同購入されるのもよいでしょう。業務用バリカンの切れ味は抜群で散髪が楽しくなります。これは余談ですが、私たち理容師は、丸刈りを嫌がってしぶしぶ理容室にやってきた男の子でもいつもわりきってすっぱりとバリカンを入れます。気を使ってゆっくり刈るよりも、思い切ってバリバリやってしまったほうが、男の子たちのうけはいいようです。ご家庭で息子さんを丸刈りにするときも、うじうじ嫌がっているようだったら、軽く笑いとばしてあげるくらいがいいんじゃないでしょうか。髪はいつでも伸びます。理容師でない普通のお母さんでも電気バリカンに慣れてくると、長髪の男の子を5分でキレイな丸刈りにできるようになります。お家に電気バリカンが一台あれば、息子さんの丸刈りだけでなく、ご近所の男の子たちの丸刈りも手軽にできます。ご近所で丸刈り専門のボランティア床屋さんを開かれるのもいいかもしれませんね。
次に女の子のオカッパとショートカットについて簡単にご紹介します。学校によっては毛先をそろえる程度のカットしか必要としないロングの三つ編みが指定されているというところもありますが、やはりオカッパの学校が大半です。一口にオカッパと言っても、長さは様々で、おおざっぱに言えば、肩より少し上、あごのライン、鼻のライン、目より少し下のライン、という順番で短くなっていきます。あごのラインよりも短いオカッパは、襟足を刈り上げるか、剃り上げなければならないので注意してください。ロングヘアの娘さんをせっかくオカッパにするならついつい短くカットしたくなるお母さんの気持ちもわかりますが、あまり短いオカッパはお洒落にうるさくなってきた年頃の女の子は嫌がりますので、お母さんが好きなオカッパと娘さんの希望するオカッパを話し合い、コミュニケーションをよくとって決めましょう。女の子のオカッパは前髪、横髪、後ろ髪のカットの線をまっすぐきれいに揃える必要があるので、娘さんをオカッパにカットするご予定のお母さんは、ぜひオカッパ専用のハサミであるオカッパバサミをご購入ください。オカッパバサミは値段も比較的安いうえに理容器具販売店で購入すれば十年くらいは使えます。購入の際には、刃の切れ止んだ場合のことを考えて、研ぎ直しの値段も聞いておくようにしてください。また一部の学校では女の子のショートカットが許可されていたり、逆に運動部に所属する女の子の髪型は耳を出したショートカットと指定されている学校もあり、オカッパよりもショートカットにしたい、させたい、という娘さんやお母さんもいらっしゃるでしょうから、ショートカットの散髪手順もあわせて収録しました。また、学校の運動部などの髪型指定や、娘さんやお母さんのお好みで、娘さんのショートカットの襟足や耳周りを軽く刈り上げてあげたいというお母さんのために、電気バリカンを使ったショートカットの刈り上げの作り方が、刈り上げないショートカットの散髪方法とあわせて紹介されています。ショートカットの刈り上げはハサミとクシでもできますが、少しテクニックが必要で、電気バリカンの使い方をきちんと覚えれば、電気バリカンのほうがショートカットの刈り上げがより簡単に早くできるので、刈り上げをご希望であれば、電気バリカンの使用をお勧めします。また女の子のロングヘアーなどを一気に短いオカッパやショートカットにカットすると、ネックラインやもみあげに後れ毛が残ります。長く残った後れ毛はハサミで切り整えてもいいのですが、剃ったほうがさっぱりして綺麗に仕上がります。後れ毛をカミソリで剃る方法も記載しました。
わたしは理容師になってもう二十年以上になりますが、これまでの経験上、お子さんがお母さんに散髪してもらったのはいいのですが、どうしようもないようなトラ刈りや一部分だけを極端に切りすぎた状態でお子さんをお店に連れてこられる方が意外とたくさんおられるものです。そういった失敗の原因を考えてみると、お母さんが、たとえご家庭にプロが使うほど品質の高いハサミやクシやバリカンを持っておられたとしても、肝心のその道具を使ってのカットの仕方について誰からも教わる機会がないのだということに思い当たりました。それが本誌にご家庭での子供のための散髪方法を寄稿したいきさつです。
皆さんの中には、散髪をとても難しい複雑な技術と思われている方がいらっしゃるのではないでしょうか?そして、自分にはできるわけがないとあきらめておられる方が多いではないでしょうか?しかし、むずかしく考えないで、気持ちを楽にしてください。必ずできると自分に言い聞かせましょう。失敗を恐れていては何もできません。髪を実際にカットすればするだけカットの腕はあがります。カット上手になったお母さんはお子さんたちに尊敬されることでしょう。アメリカでは、お母さんがスーパーなどから買ってきたハサミやクシやバリカンを使って、子供の散髪をするのが当たり前になっています。日本人は手先の器用さでは欧米の人々と比べても見劣りしません。適切なアドバイスがあり、散髪道具に慣れれば、あなたはもう我が家の素敵な床屋さんですよ!!
理容師:谷山広子