katabami.org

思索とアートとヘアカット
カテゴリ:

炎上せずに議論に勝つ方法

二人の人が大声を上げてののしりあわずに理屈の通った議論ができるでしょうか?わたしは頑固者なので、感情的になって議論がヒートアップしないないようにするのにとても苦労します。しかし、わたしはやり方を変えることで議論を思い通りに運ぶことができるようになりました。今ではわたしは普通に議論を友好的な雰囲気で続けることができるのです。

友好的な議論は普通なのでしょうか?いいえ、絶対にそんなことはありません。この投稿で行われた無神論と有神論の議論があまりにも友好的に行われたことに驚いてたくさんのコメントを読者の方からいただきました。一方、わたしが聞いたところの大半のオンラインでの議論は(そして多くのオフラインでの議論も)次のように進んでしまうものなのです。

  1. 一人の人が何か反論を招きそうな論点を持ってきます。「犬は猫よりもいいよ」
  2. もう一人の人がそれに反対しようと決めます。「とんでもない。猫のほうが犬よりもいいに決まってる」
  3. 最初の人が自分たちの議論をサポートしてくれる事実をリストアップします。「犬は吠えることができる。だから、犬は猫よりもいいんだ」
  4. 次の人がそれに反対して個人攻撃を始めます。「なんで吠えるのがいいんだ。明らかにあなたは馬鹿だ。あなたのお母さんの貞操観念も疑わしい」
  5. そして地獄の幕開きです。

始めた議論すべてに勝つ方法

スタートレックのエピソードをご紹介しましょう。データ(アンドロイド)が、宇宙人と戦略ゲームをします。(スタートレックファンでないあなたもしばらくわたしの比ゆ的な脱線にお付き合いください)データは最初のゲームで宇宙人に敗れます。ゲームの論理構造に関しては優れているはずのコンピュータの頭脳を持っているのにもかかわらず彼は負けたのです。

その後、データは相手に対戦を申し込み、なんとか彼を打ち負かすことに成功します。データが説明しているように、キーとなるのは彼がゲームをする前提条件を変えたということにあるのです。データは勝とうとする代わりに相手をステールメイト(身動きが取れず先に進めない状態)に誘うことを狙ったのです。この明らかな戦略の転換によって相手は困り果てついに負けを認めることになったのです。

教訓:勝てないのであれば、ゲームの前提を変えてしまおう。

議論が到達するはずのゴールを単に変えるだけで、あなたは全ての議論において勝つことができるのです。たいていの人たちは、議論を始めると、自分の言っていることが正しいと相手に思わせることを議論のゴールにしてしまいます。そういうひとたちは次のような戦略によって議論に勝利しようとします。

  1. 自分が正しいことを立証する圧倒的な事実と証拠を持ってくる。
  2. 相手が持ってくるすべての議論に対して反対の立場をとる。
  3. 相手は自分の非の打ち所のない議論に圧倒されて、自分に同意するだろうと考える。

この戦略の問題点は、ひとつ明らかな欠陥を含んでいるということにあります。いつでも相手が「No」と言えるということです。

あなたがもし全てが論理的にくみ上げられた完璧な議論を用意したとしても、それでもなお、反対を受けて議論が終わってしまうのです。同意するか反対するかは相手次第なのです。あなたは一論者として相手を説得させる力を何一つ持っていないのです。相手は単に「No」と言うだけでいいのですから。

実際に議論に勝つ方法

自分が正しいのだと相手を説得しようとする代わりに、ちがう前提を設けましょう。わたしは議論を始めるとき、有効な議論へと導いてくれるいくつかの前提条件に立つことにしています。

  1. 学ぶために議論をします。自分が正しいのだと相手に確信させるのではなく、自分自身の論理の欠点を明らかにするために議論を使います。
  2. 別の観点を理解するために議論をします。相手を説得させようとするのではなく、なぜその人が反対するのかを理解しようとします。人が理由なく強い信念を持つことはありません。相手が主張していることの理由を明らかにするために会話する時間を使いましょう
  3. 主張を伝えるために議論をします。人に自分が正しいことを納得させようとするためではなく、人に違う観点を見せるために議論を行います。他の人が意見を変えるかどうかに成功の基準を設けずに、その人になぜ自分がそう信じているのかを伝えるのです。

皮肉なことに、このような前提に立って議論をすると、相手を説得しやすくなるのです。データは勝とうとしないようにすることで勝ちをおさめました。相手が下心を持っていないと感じたとき、人はより効果的に説得されやすいものなのです。

熱を冷ます3つの方法

議論に対して「禅」の態度を取ったとしても、議論は熱してしまうものです。他の人が違った観点について述べただけで叫びだしてしまう人もいます。こういうことは特に政治、宗教、菜食主義、同性愛の権利、妊娠中絶といったホットな話題の場合に頻繁に起こります。こういう場合には他の人たちをクールダウンさせるための道具が必要です。

火災を鎮火させるわたしの秘密兵器をいくつかご紹介しましょう。

1)相手に同意する

相手に同意することを戦略的な方向性とすることからはじめましょう。議論において十分な同意を示すことができたなら、異なった意見を出すのが容易になります。相手が自分と同じ側に立っていると感じていたら、人は相手を攻撃しようとしません。

無神論について議論をする際、わたしなら、宗教や神に関して、現状、わたしが同意できる部分から話しを始めます。道徳の中核としての必要性や、哲学体系の質のための必要性や、科学の不足を補うための必要性といったことから話し始めていいわけです。これらの譲歩が弱さの兆候だと感じる人もいますが、実際には議論する際に大いに力になってくれます。

2)自分と反対の議論を助ける

あなたとは反対の立場に立って議論を行いましょう。資本主義が社会主義よりも政治哲学として優れているのだと信じている理由について議論しているなら、資本主義に対する簡単な反論をいくつか示すことから始めます。環境における問題点や、企業が強大になりすぎる危険性や、下院の悲劇といったものはみなスタートの話題として適切です。

反対意見を助けることで二つのことが生じます。

  • 相手が武装解除されます。相手があなたに使うであろう最高の武器をあなた自身が使うことで、ゲームのポイントを取り除くことになります。あなたが反対の考え方にも聞く耳を持っているということを表明することで、議論を建設的なものにすることができるのです。
  • あなたが独断的でないことを示されます。相手の反論を自分自身に使うことで、あなたが自分の考えていることを狂信的に信じ込んでいるのではないことが相手に伝わります。提出された証拠がもしも説得力あるものであれば、あなたが理性的な判断で自分の観点を調整するだけの用意があることが示されるのです。

自分自身の議論を弱めずに相手の側を助けるにはどうすればいいのでしょうか?わたしの答えはふたつの態度のうちのひとつを取ることです。第一の態度は、提起された反対意見がどのように克服されるのかを指し示すことです。環境に関する議論を和らげるひとつの方法として、市場原理にのっとった温室効果ガスの解決方法について話すといったことです。もうひとつの態度は、自分の立場が完全でないことを素直に受け入れ、反対する相手と、よりよい答えにたどり着けるように共同作業を行うというものです。

3)感情移入

自分が用意した事実や他の人に抱いている感情を大声でわめくのではなく、他の人たちがどのように感じているのかを感じるように努めましょう。仮にもし相手の立場が間違っていると信じていたとしても、その議論についての相手の情熱は間違ってはいないのです。相手の立場に同意できないとしても、相手の情熱を取り込んでみるようにしましょう。

政治や宗教に関する議論はわたしたちが思う以上に関係性における議論と関わっています。結局、議論は事実や論理によって勝ちが決まるのではなく、どう感じるのかで勝ちが決まるのです。感情移入することなしに論理だけで勝った場合は常に、勝利は中身のないものになってしまいます。最終的には誰かを納得させるのではなく自分自身を納得させることになるのです。

以上は、
原文:「How to Win a Debate Without Starting a Flame War」Scott Young
からの翻訳です。

サイトマップ © katabami.org 2024